関西の世界遺産「古都奈良の文化財」アクセス・周辺の観光地から登録理由まで

古都奈良の文化財の概要

710年、現在の奈良市西部に「唐の都・長安」を模して造られた平城京は、784年に京都の長岡京に遷都されるまで、概ね日本の政治の中心として栄えました。

遣唐使を通じて、積極的に大陸の政治・文化を取り入れ、日本の国としての形が作られていくのに、重要な時期であり場所でした。

さらに東大寺を始めとする、数々の大寺院も建てられましたが、長い歴史の中で、多くの貴重な建物は失われてしましました。

しかし、修復、再建を繰り返し、特に今回指定された構成遺産は、それらが良い形で保存、伝承されています。

古都奈良の文化財の所在地・基本情報

・名称:古都奈良の文化財
・英語名:Historic Monuments of Ancient Nara
・登録日;1998年12月
・住所:奈良市内にある8件の指定遺産と緩衝地帯
・電話番号:0742-22-3900
(公益社団法人 奈良市観光協会)
・交通アクセス:8件の指定資産へは全て市内の公共交通利用でアクセス可能。
ただし奈良公園内なら徒歩や貸自転車でゆっくり回る方をお勧めします。
・公式サイト:https://narashikanko.or.jp/feature/world-heritage/

古都奈良の文化財の構成資産

  • 東大寺
  • 春日大社
  • 春日山原始林
  • 興福寺
  • 元興寺
  • 薬師寺
  • 唐招提寺
  • 平城宮跡

古都奈良の文化財のみどころ

日本史の教科書を開けば、最初の頃に登場する、修学旅行の定番の観光地として奈良は有名です。奈良と聞けば「奈良公園」に「鹿」に「大仏」、世界遺産に登録された施設のいくつかは、どなたでもご存じの場所だと思います。

奈良に行けば千数百年の昔からはじまる巨大寺院建築、守り伝えられて来た仏像の数々、そして自然に溶け込んだ社を楽しむ事ができます。ここでは奈良を代表する4ヵ所を紹介します。

東大寺のみどころ

奈良を代表するお寺と言えば、この東大寺。そして東大寺と言えば大仏殿・大仏さまです。

8世紀、聖武天皇の詔によって鎮護国家の象徴として、廬舎那仏(大仏)が造立され、鎮座する場所として大仏殿が建てられました。現存の木造建築としては世界最大の物です。

東大寺には大仏殿をはじめ数多くの建物がありますが、幾度も兵火に遭って、多くの建物が失われてしまいました。

しかし、その度に修復、再建が行われ、大仏殿も2度の大火に遭い、今の建物は江戸時代に再建されたものです。

廬舎那仏は銅製でしたが、多大の被害を受け、大規模な修復がなされています。現在の廬舎那仏は江戸時代に修復され、台座を含めると約18mもあります。

東大寺の建物以外の見どころは、何といっても仏像です。大仏殿内には、他にも4体の巨大な仏像が収められていますが、南大門の仁王像、法華堂(三月堂)の数々の仏、戒壇院の渋い四天王。東大寺では、国宝に指定された建物や仏像が目白押しです。

また校倉造りで有名な正倉院には、国内外の天平文化を代表する美術工芸品や古文書などが多数保存されています。

興福寺のみどころ

興福寺は東大寺に負けず劣らず、奈良の有名寺院で、猿沢池に映る五重塔は、奈良の代表的な風景の1つです。平城京遷都と時を同じくして、造営が始められた興福寺は、皇室や藤原氏の庇護を受け、古代から中世にかけて強大な力を誇っていました。

しかし、東大寺と同じく兵火に焼かれ、繰り返し復興がなされました。明治の廃仏毀釈では決定的なダメージを受け、現在は国宝に指定されている仏像も放置され、五重塔に至っては売り飛ばされるとの噂さえ広まったようです。

それらを乗り越え、残された建物や仏像は、今となっては多くの観光客を引きつけています。近年、新たに中金堂も再建され、五重塔、東金堂、北円堂や南円堂と境内がにぎやかになってきました。

これらの建物の中にも仏像は安置されてますが、昭和に建てられた国宝館には綺羅星のごとく多数の国宝や重要文化財指定の仏像がひしめいています。

春日大社と春日山原始林

興福寺が藤原氏の氏寺とするなら、春日大社は藤原氏の氏神です。朱塗りの社と回廊にぶら下がる多くの灯篭が印象的です。

およそ20年ごとに「式年造替」を行い本殿の建て替えや修復を行っていますが、本殿そのものは、創建以来、同じ場所に造られています。

広い境内には、数多くの小さな社が祀られています。奈良公園には多くの鹿がいますが、それは春日大社の神様が、鹿島神宮から遷る時に、白い鹿に乗ってきたとの伝承から、鹿は神聖な生き物「神鹿」として、大切に保護されてきたからです。

春日大社国宝館には、主に平安時代に奉納された、甲冑や刀剣など、国宝や重要文化財に指定された、文化財が展示されています。

春日山原始林は、春日大社とは別の構成資産として登録されていますが、春日山原始林はあくまで春日大社の神山として、長きに渡り伐採が禁じられて来ました。

そのため、今日まで人の手がほとんど入っていない、広葉樹の原始林が残されるという結果になりました。つまり春日大社と春日山原始林は一体であり、人里離れた場所にある、自然の遺産ではありません。

昭和30年には、早くも特別天然記念物に指定されています。今日では観光客のための遊歩道も整備されています。

古都奈良の文化財が世界遺産に登録された理由

古都奈良には、各時代に修理再建を繰り返してきたとは言え、8世紀の大陸の影響をうかがい知る、寺社建築が多く残されています。

さらに宗教儀式、それに伴う仏具や仏像は、創建当時からそのまま伝えられてる物もあります。平城宮跡では発掘によって「唐の都・長安」を模して造られた日本の都の姿を知る事ができます。

古都奈良の文化財が該当する登録基準

(ⅱ) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。

(ⅲ) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。

(ⅳ) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

(ⅵ) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)

登録基準に合致している点はどこ?

(ii)の条件について

大陸の中国や朝鮮半島との交流により、平城京には仏教という新し宗教思想、大陸風の都、建築様式が伝えられました。それに日本独自の要素を加え、今まで見られなかった国際的な新しい文化が開花しました。鎮護国家の象徴として巨大な東大寺や、その他にも多くの寺院が建てられ、書画や楽器など儀式に使われた物の一部はそのまま現在も保存されています。それらは大陸の中国を通り越し、遠くペルシャやローマの匂いすら感じさせられます。

(ⅲ)の条件について

8世紀の奈良時代は、新たに律令国家としての形を造る上で重要な時期でした。都の奈良でこそ天平文化が花開いていましたが、それらが地方に伝わるのは、まだまだ何世紀もの時間を要しました。こういった点で古都奈良の文化財は、日本の他の地域では見られない貴重な物です。

(ⅳ)の条件について

平城宮跡は発掘によって、当時の政治家や官僚が多くを占めていた日本の都の形が、かなりはっき分かってきました。さらにどういった生活をしていたかまで、出土品によって明らかにされています。それらがそのまま史跡として保存されています。平城宮跡を見る事によって、日本のみならず、大陸の都の姿も容易に想像できます。一方、寺社建築では、建築技術や様式を直接見る事ができます。なかでも東大寺は、天皇中心の律令国家・中央集権を目指した象徴的な存在です。

(ⅵ)の条件について

古都奈良の文化財は、大陸から来た仏教、日本古来の神道、そして日本を形造る律令体制の思想の元に造られました。 それらは長い年月を経て融合、新たな思想が生み出されていきました。現在も文化財を維持管理していくには、そのための技術の伝承が不可欠です。また、伝統行事にもそれを受け継ぐ人がいなけれな直ぐに途絶えてしまいます。もちろん、周囲の環境も放置していては適切に維持されません。これらの障害を乗り越えてはじめて、今日の文化財の姿を見る事が出来るのです。

古都奈良の文化財へのアクセス

まずは奈良市に入り、そこからバスや電車など公共交通機関を使ってのアクセスになります。

東京から古都奈良の文化財へ行くには?

所要時間:約3時間

東京駅から京都駅まで新幹線で約2時間10分、京都駅からJRか近鉄でおおよそ50分前後。

大阪から古都奈良の文化財へ行くには?

所要時間:約40~50分

大阪駅からJRの大和路快速で奈良駅まで約50分。
大阪難波駅から近鉄の快速急行で近鉄奈良駅まで約40分。

古都奈良の文化財周辺の観光地

奈良市内には歴史が古く、さらに貴重な文化財を所有してる寺社が、構成遺産以外にもたくさんあります。しかし、ここでは寺社以外で、奈良市から簡単に行ける興味深い場所を2つ紹介します。

飛鳥(明日香村)

平城京に都が作られた時期は、奈良時代と呼ばれていますが、この飛鳥地方が栄えていたのは遥か昔、古墳時代から飛鳥時代にかけてです。古墳時代は、ほとんど歴史が分かっていない謎多き時代で、飛鳥時代は日本が国として成り立つ前の混とんとした時代です。この地域には猿石や亀石といった石像や、酒船石や巨大な石舞台など用途不明の石造物が多数あります。他にも高松塚やキトラといった、新聞紙上をにぎわした古墳群、聖徳太子や蘇我氏、大化の改新にゆかりの場所や寺院も残されています。これらはあちこちに点在していますので、駅近くの貸し自転車屋の利用がお勧めです。

アクセス

所要時間:約1時間
近鉄奈良駅から大和西大寺駅で乗り換え飛鳥駅下車

今井町(橿原市)

東西約600m、南北約310mのエリアに、江戸時代の雰囲気を濃厚に残した街並みが続き「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。戦国時代、浄土真宗・称念寺の寺内町として発展し、江戸時代には堺と同じく自治特権が与えられ「大和の金は今井に七分」といわれるほど繁栄を謳歌しました。周囲に環濠をめぐらせていた今井町には、およそ1500棟の建物がありますが、約500棟が伝統的建造物です。これは全国一の数を誇ります。早い時期から保存活動が行われて、街並みが整備されてきました。古民家を改装した、レストランやカフェもオープンしていて、ブラブラ街ち歩きには最適の場所です。

アクセス

所要時間:約50分
近鉄奈良駅から大和西大寺駅で乗り換え大和八木駅まで約40分、下車後、徒歩約10分。
JR奈良駅から桜井線で畝傍駅約40分、下車後、徒歩約10分。

古都奈良の文化財周辺の宿泊施設

奈良も京都同様、昔から観光地として有名で、宿泊施設も数多くありますが、歓楽街はもちろん繁華街らしき場所も小規模なので、人によっては京都や大阪を宿泊地に選ぶ人もいます。

しかし、早朝や夕暮れ後の奈良公園の散策など、やはり奈良に宿泊しないと得られない事も多々あります。ここでは価格帯の異なる5つの宿泊施設を紹介します。

登大路ホテル奈良

客室は14室のみ、お子様は中学生以上から宿泊できる、大人のためのトップクラスの高級ホテルです。近鉄奈良駅からすぐの立地で、普通に奈良公園の方に向かって歩いていれば、気づかずに素通りしてしまいそうな小さな建物です。しかし、客室や共用スペースの調度や設備はもちろん、サービスも一流で、外観からは想像し難い豪華な空間が広がっています。部屋によっては興福寺の国宝・北円堂を目の前に眺める事ができます。昼間の観光はほどほどに、ホテルでの滞在をゆったり優雅に楽しむための場所です。

・近鉄奈良駅から徒歩数分。

奈良ホテル

2019年、創業110周年を迎えた奈良の老舗ホテルで、猿沢の池の東隣りの荒池の畔に建ち、春日大社や興福寺へも近い立地です。日本のクラッシックホテルの代表格で、かつては「西の迎賓館」と呼ばれ、国内外の著名人が数多く宿泊していました。現在は、創業以来の木造2階建ての本館と新館で、合わせて127室の客室があります。本館は、建物自体が歴史的建造物の仲間入りをしてもいいような風格で、このホテル宿泊が目的で奈良を訪れる利用客もいるほどです。

・近鉄奈良駅から徒歩約15分またはタクシーで約5分。

ホテル日航奈良

JR奈良駅に直結した、客室数330部屋を持つ、県下最大の都市型ホテルです。 列車で奈良へ到着後、改札口を出てそのままホテルにチェックイン、部屋に荷物を置けば直ぐに町へ飛び出せます。駅ビルにはスーパーやレストランもあるので、一人での観光でも食事の煩わしさがありません。宿泊者専用の大浴場があって、昼間の汗をさっぱり拭って、気持ちよく眠れます。しっかり観光に集中したい人には打ってつけのホテルです。

・JR奈良駅西口に直結していて徒歩数分

ピアッツァホテル奈良

こちらもJR奈良駅の西に隣接して建っている、2017年開業のシティーホテルで、建物も部屋も新しく綺麗です。客室数は137部屋、スタイリッシュな窓を大きく取り込んだ設計で、高層階からは素晴らしい眺めが堪能できます。ホテルでの食事も楽しめますが、周辺に食事をする所はたくさんあるので、選択肢が広がります。ここもホテル日航奈良と同じ価格帯ですので、ビジネスホテル感覚で使えます。

・JR奈良駅西口に隣接していて徒歩数分。

遊山ゲストハウス

近鉄奈良駅に近く、築約100年の日本家屋を改装したゲストハウスです。和室の個室が2部屋、ツインルームの個室が1部屋、女性専用ドミトリーが1部屋、男女混合ドミトリーが1部屋というこじんまりとした宿です。ゲストハウスの常として、同宿してるメンバーによって宿の快適さが左右されますから、自己主張が不得手、自分のペースでの観光を考えている人には、普通の宿をお勧めします。ただ予算を節約したい人にはゲストハウスはかかせません。

・近鉄奈良駅から西へ徒歩約5分。

まとめ

観光資源の多い奈良も近年海外の観光客が増えてきました。しかし、徒歩かせいぜい自転車で観光をする場合が多いためか、市内バスが凄く混んでるといった景色にはお目にかかりません。

さらに緑に囲まれ、広々とした境内に大きな寺院が建っているといった点でも、観光客でごった返すといった状況が、生まれにくいのかもしれません。修学旅行以来、久しぶりに奈良を訪れても、なんとなく昔と同じ雰囲気を感じられると思います。

やはり奈良はのんびり、気ままにブラブラ散歩の感覚で観光するのをお勧めします。

参考記事

古都奈良の文化財の概要(奈良市)
奈良の世界遺産(奈良市観光協会)
奈良公園・平城宮跡アクセスナビ(奈良県)
日本ユネスコ協会連盟(公益社団法人)
古都奈良の文化財(Wikipedia)

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