「石見銀山遺跡とその文化的景観」の概要
島根県太田市。石見銀山。
かつてそこで生み出された良質で大量の銀は世界経済を動かし、欧州の人々は、「銀鉱山の王国」の地図に記した。
--「石見銀山世界遺産センター」トップページより。
石見銀山は、16世紀から20世紀にかけて最盛期を迎えた、日本最大の銀山でした。
日本は、その期間における世界の銀の市場のうち3分の1を産出したと言われていますが、冒頭の「石見銀山世界遺産センター」の引用によるとおり、石見銀山の銀はその大半を占めていたとされています。
江戸時代末期にはほとんど銀が産出されなくなってしまいます。それでも、銅などが採掘され続け、昭和18年に完全閉山となるまで長きにわたって日本の経済を支えてきたのです。
石見銀山の坑夫たちは、山を崩しことや森林の伐採することなしに採掘をしてきました。
その“21世紀が必要とすべき環境への配慮”が大きく評価されるなどして、2007年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」が世界文化遺産として登録されました。
この登録では、“文化的景観”とあるように、中核となる石見銀山のある銀鉱山跡エリアを含めた4つのエリアが対象となっています。この記事では、それぞれのエリアの特色にも言及しながら、石見銀山の魅力に迫っていきます。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」の基本情報・所在地
- 名称:石見銀山遺跡とその文化的景観
- 英語名:Iwami Ginzan Silver Mine and its Cultural Landscape
- 所在地:島根県太田市
- 電話番号: 0854-89-0183(石見銀山世界遺産センター)
- 交通アクセス:(石見銀山世界遺産センターまで)JR山陰本線・大田市駅からバスで約33分。バス停「世界遺産センター」下車すぐ。
- 公式サイト:https://ginzan.city.ohda.lg.jp/inquiry/ (石見銀山世界遺産センター。開館時間 8:30~17:30。休館日毎月最終火曜日・年末年始)
「石見銀山遺跡とその文化的景観」の構成資産
先述のとおり、構成資産として、以下の4つのエリアが登録対象になっています(エリア分けについては石見銀山世界遺産センターを参照)。
世界遺産としての範囲は、2010年に軽微な変更がありましたが、登録範囲は約529ヘクタールと広大です。
1.銀鉱山跡エリア
・銀山柵内
2.銀鉱町エリア
・銀山柵内
・代官所跡
・大森・銀山
・宮ノ前
・熊谷家住宅
・羅漢寺五百羅漢
3.街道・山城エリア
・石見銀山街道鞆ケ浦道
・石見銀山街道温泉津・沖泊道
・矢滝城跡
・矢筈城跡
・石見城跡
4.港と港町エリア
・鞆ケ浦
・沖泊
・温泉津
以下の「みどころ」では、特に訪れるべき名所の特徴を述べていきます。
みどころ①--銀山柵内
まずはなんといっても、石見銀山の本体とも言うべき「銀山柵内」が挙げられるでしょう。
本体というだけあって、ここだけでも広大な面積を誇ります。世界遺産の登録箇所としては、
仙ノ山・仙ノ山城郭群、本谷間歩群、大谷間歩群、清水谷間歩群、安原谷間歩群、於紅ヶ谷間歩群、石銀間歩群・石銀集落跡、昆布山谷間歩群、山吹城跡、佐毘売山神社
など、多くの遺産・遺構が良い状態のままに現存しています。
それらからは、今でも、当時の採掘現場の雰囲気が強く感じられることでしょう。
みどころ②--龍源寺間歩
石見銀山は、大小様々な坑道が900本以上も現存、見つかっています。
その中でも、龍源寺間歩は代表的な坑道です。その長さ約600メートル。実際に見学できる公開エリアとしては入り口から約160メートルです。
この坑道は、なんと金槌とノミだけで掘られ、その壁を見ると坑夫たちの凄まじい働きぶりが窺えることでしょう。
なお、ここは江戸幕府直属の管理にあり、採掘された銀は幕府の収入源であったとされています。
みどころ③--羅漢寺五百羅漢
石見銀山の石工技術を象徴する、宗教に関する遺跡です。
「羅漢」とは、最高の“さとり”に達した聖者のことを指します。ここから、五百羅漢にたいする信仰も生まれました。
その当時、銀山の採掘は命がけの仕事でした。
羅漢寺における、左右に掘り出された洞窟--石窟の中には、250体ずつ五百羅漢像が安置されています。これらは亡くなった坑夫たちの霊を供養するために彫刻されたもののようです。
石見銀山が“文化”として現在に至るまでの過程とはいったい--その困難さがはかれる場所です。
みどころ④--大森銀山伝統的建造物群保存地区
2007年の軽微な変更として、
景観という観点から、町並みの背景となる両側の稜線から山裾までの山林も資産範囲に含めるべき。
との理由から、大森銀山は、重要伝統的建造物群保存地区に追加されました。
大森は17世紀から、石見銀山の行政と商業を支える町として発展。
ここは狭い谷に挟まれるためか、侍・商人・一般の百姓・寺院などが密集した町になりました。そのため、当時の日本としては、社会階級における区別が比較的小さかったようです。
一方、多くの家屋の屋根が赤瓦であることが視覚的な特徴です。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」が世界遺産に登録された理由
石見銀山遺跡とその文化的景観は、“21世紀が必要とすべき環境への配慮”があったことが大きく評価されました。
また、石見銀山の坑夫たちが、
- 採掘の際に狭い坑道を掘り進むことで環境を破壊しなかったこと
- 採掘の後に失った分だけ植林を行っていたこと
も評価の一因となりました。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」の該当する登録基準
(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(iii)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(v)あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
--日本ユネスコ協会連連盟HPより
登録基準に合致しているのはどこ?
世界経済への影響
先述のとおり、世界の銀の市場のうち3分の1を産出したと言われていますが、石見銀山の銀はその大半を占めていたとされています。
これはアジアやヨーロッパ諸国、ひいては世界への経済や文化の交流にたいして影響を与えたと評価されれました。
遺産・遺構としての保存状態
銀山柵内をはじめとして、実際に坑道では当時のノミの跡を実際に見ることができることなどが、「良好な保存状態を保持した遺産・遺構である」として評価されました。
また、その周辺の関連遺産・住居群なども同様の理由で評価されました。
石見銀山と自然の共存
石見銀山とその周辺の遺産は、“銀山”という鉱業的側面があるにもかかわらず、環境を破壊することなく、文化的警官として現在に伝わっています。
この石見銀山の運営は、ユネスコの求める“21世紀が必要とすべき環境への配慮”がすでに行われていたものとして、登録基準と合致しました。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」へのアクセス
この世界遺産は広大なエリアに渡るため、中心となる「石見銀山世界遺産センター」へのアクセスをご紹介します。
東京から「石見銀山世界遺産センター」へ行くには?
所要時間:約7時間
JR東京駅から新幹線でJR広島駅まで約4時間。
広島駅新幹線口から高速バスで「世界遺産センター」まで約2時間40分。
大阪から「石見銀山世界遺産センター」へ行くには?
所要時間:約6時間
JR新大阪駅から新幹線でJR新山口駅まで約2時間。
JR新山口駅から特急電車で太田市駅まで約3時間。
太田市駅からバスで「世界遺産センター」まで約30分。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」周辺の観光地
島根県立三瓶自然館サヒメル
三瓶自然館サヒメルは、島根県の自然に関する様々な展示・調査研究などを行う博物館です。本格的な天文台やプラネタリウムを備えています。
仁摩サンドミュージアム
仁摩サンドミュージアムは世界一大きな砂時計がある砂博物館です(公式サイトより)。
当ミュージアムには6つガラスのピラミッドがあります。公式サイトで謳われているように、その1つが高さ5.2m直径1mの世界最大の一年計砂時計です。使用されている砂は約1トン。
某漫画の舞台ともなり、話題になりました。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」周辺の宿泊施設
温泉津温泉(ゆのつおんせん) 旅の宿輝雲荘
発見されてから約1300年の歴史を持ち、湯治場として評判の由緒ある温泉です。
石州瓦と呼ばれる独特の赤瓦と渋い光沢の黒瓦でデザインされ、どこか昔懐かしい感じがする温泉街に「旅の宿 輝雲荘」はございます。
と、旅館のHPのメッセージにあるように、旅の宿輝雲荘は石見銀山を訪れた際にはぜひ泊まってみたい旅館です。
「お肌がスベスベになる」という口コミもさることながら、料理もさまざまは魚の刺身が楽しめます。
価格帯も上記の魅力にたいしては非常にリーズナブルです。
湯るり
こちらもリーズナブルな価格で宿泊できる旅館です。
ゆのつ温泉まで徒歩1分の好立地で、なんと築150年を誇る民家にて運営されています。築150年である一方、客室はこぢんまりとしていながらも非常に“おしゃれで清潔”な、どこか西洋チックな和室となっています。
客室は5部屋しかないため静かに時間を過ごすことができるでしょう。しかし、もちろん予約も埋まりやすいため早期のチェックをおすすめします。
世界遺産 石見銀山の宿 ゆずりは
こちらは、石見銀山の真ん中にたたずむ旅館です。
そのため、その景観と溶け込み、世界遺産を感じながら貴重な時間を過ごすことができるでしょう。
客室、ロビー、お食事。どれをとっても一級品のお宿です。コースのよっては、ズワイガニをいっぱいに堪能できるよう。
温泉津温泉 旅館ますや
“創業百年、木造三階建て旅館、総天然にこだわったオリジナル会席料理は部屋出し、一品出し”と謳う当旅館は、価格帯15000円からと高級なお宿です。ですが、まず、「迷ったらここに泊まれば間違いなし!」という要素で満たされています。
当旅館は、その昔、廻船問屋を営んでいたという、ゆのつ温泉では最も古い旅館に含まれます。 それで館内には船に関する物が多く残っているとのこと。
当日入荷する天然魚・地元肉・地元野菜などが楽しめます。
まとめ
坑夫たちが汗水を垂らし活気いたであろう文化や空気感と、その文化を包み込む自然。そして周辺の魅力な温泉や施設でひしめく世界遺産--石見銀山遺跡とその文化的景観。
そこを訪れることは、かつて坑夫たちが生きた時代にタイムスリップにも等しいのかもしれません。
ぜひあなたも石見銀山を目にしてはいかがでしょうか。
参考記事
https://www.unesco.or.jp/activities/isan/decides/
https://ja.wikipedia.org/wiki/石見銀山#世界遺産
https://ginzan.city.ohda.lg.jp
https://www.all-iwami.com/feature/detail_58.html
https://www.wbf.co.jp/chugoku/kanko/iwamiginzan.php
https://kotobank.jp/word/羅漢-146966
https://www.nature-sanbe.jp/sahimel/about/facility.html
https://www.sandmuseum.jp/guide/
https://hotel.travel.rakuten.co.jp/hotelinfo/plan/19445?
https://hotel.travel.rakuten.co.jp/hotelinfo/plan/19445?f_teikei=&f_heya_su=1&f_otona_su=1&f_s1=0&f_s2=0&f_y1=0&f_y2=0&f_y3=0&f_y4=0&f_kin=&f_kin2=&f_squeezes=&f_tscm_flg=&f_tel=&f_static=1
https://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/1417/1417.html
https://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/177668/177668.html