「紀伊山地の霊場と参詣道」の概要
一般に「紀伊山地」と言えば、三重県・奈良県・和歌山県と3県を跨いだ、紀伊半島の大部分を占める山岳地帯を指します。そのスケールは、東西南北それぞれに走る、標高1,000~2,000m級の山脈と壮大なものです。
そして、 「紀伊山地の霊場と参詣道」は、その霊場や参詣道の関係性などが文化的景観として評価・登録された、“1つとして”の世界文化遺産です。
しかしながら、3県を跨いだ世界遺産のため、各県から「うちとしてはココは見せ場!」と言わんばかりのアプローチが激しく行われています。
本記事では、それぞれの県の視点からの特色も言及していきます。
霊場とは?
神社・仏閣などの宗教施設やゆかりの地など、神聖視される場所をいう。古くから信仰の対象になっており、現在でもお遍路や修験者などの往来の多いところがある。 --Wikipediaより
と、神や仏とのゆかりがある場所を指します。紀伊山地では、その森の奥深くに広がる吉野・大峰、熊野三山、高野山がそれこそ“霊場”なのです。
参詣道とは?
参道(さんどう)とは、神社や寺院に参詣するための道のことである。 --Wikipediaより
紀伊山地では、熊野参詣道・大峯奥駈道・高野参詣道などが著名です。これらの参詣道と先ほどの3つの霊場が合わさって、現在においても「良い状態でに現存している比類のない遺産である」と評価されたことが世界遺産登録へとつながりました。
このように、紀伊山地は、霊場と参詣道が日本の宗教・文化の発展に影響した世界遺産として知られています。
が、注目すべきは、世界“文化”遺産として登録されていること。
これについては追って説明していくことにしましょう。
「紀伊山地の霊場と参詣道」の所在地・基本情報
- 名称:紀伊山地の霊場と参詣道
- 英語名:Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range
- 登録日:2004年7月7月(2016年1年26日に軽微な変更あり)
- 所在地:和歌山県・奈良県・奈良県。3県で合計26市町村が対象。各地の霊場へと参詣道が縦横無尽にかけ巡っているため。参考→ http://www.sekaiisan-wakayama.jp/know/mokuroku.html
- 電話番号①:三重県津市広明町13番地教育委員会事務局社会教育・文化財保護課(TEL:059-224-3328)
- 電話番号②:紀宝町役場・企画調整課(TEL:0735-33-0334)
- 奈良県プロモーション推進係(TEL:0742-27-8482)
- 和歌山県西牟婁郡白浜町1384-57(TEL:0739-43-5511)
- 和歌山県県教育委員会・文化遺産課(TEL:073-441-3740)
- 公式サイト:白浜観光協会 http://www.nanki-shirahama.com/kumano/
和歌山県世界遺産センター http://www.sekaiisan-wakayama.jp/
「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産
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吉野・大峯エリア
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熊野三山エリア
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高野山エリア
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参詣道(大峯奥駈道・熊野参詣道・高野山町石道)
と、その構成資産は、1つとしての世界遺産でありながら非常に多岐に渡ります。
参詣道以外のエリアでは、主要なポイント(=世界遺産に含まれる建築物など)として、神社や寺院などが対象となっています。各エリアごとの詳細なポイントは、以下を参考にしてください。
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吉野・大峯エリア
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吉野山
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吉野水分神社
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金峯神社
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金峯山寺
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吉水神社
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大峰山寺
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熊野三山エリア
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熊野本宮大社
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熊野速玉大社
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熊野那智大社
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青岸渡寺
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那智大滝
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那智原始林
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補陀洛山寺
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高野山エリア
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丹生都比売神社
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金剛峯寺
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慈尊院
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丹生官省符神社
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「紀伊山地の霊場と参詣道」の見どころ①--熊野古道
紀伊山地の霊場と参詣道は、3県に跨る、広大な面積をもった世界遺産です。当然、見所はたくさん。ぜひとも全体の雰囲気を味わっていただきたいところです。
それでも、是非とも行って感じるべき主要なスポットがあります。ここではいくつかピックアップしてご紹介します。
まずは、参詣道の1つである、熊野古道は外せないでしょう。
熊野古道は、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社へと続く参詣道です。古来から多くの旅人が歩いたとされています。石畳や杉木立。そこには静謐で神秘的な空気で満ち満ちています。
「紀伊山地の霊場と参詣道」の見どころ②--高野山
まるで聖地? 俗世とかけ離れた印象と雰囲気さえ感じられる場所、それが霊場の1つ、高野山です。高野山は、平安時代初期、空海によって開かれました。高野山全体が真言宗の総本山・金剛峯寺であり、その山内だけでも約100の寺院がひしめいています。まさに高野山は「宗教都市」とも言えるでしょう。
「紀伊山地の霊場と参詣道」の見どころ③--川湯温泉「仙人風呂」
世界遺産のその神秘的な雰囲気に包まれながら露天風呂に浸かるのも格別な経験になるでしょう。熊野川の支流から沸く73度の源泉。毎年12月~2月ごろの期間限定で登場します。
なお、冬季限定ですのでご注意ください。
「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録された理由
「紀伊山地の霊場と参詣道」は2004年に世界文化遺産に登録されました。
これは日本の世界遺産において、初めて「道」が登録されたケースでした。また、人間の営みと自然の結びつきを示す「文化的景観」としても初めての登録でした。
ちなみに、2016年、登録範囲にたいして“軽微な変更”が行われました。
(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(iii)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(iV)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
(Vi)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
登録基準に合致しているのはどこ?
古来における異国との宗教的交流
「紀伊山地の霊場と参詣道」という遺産は、日本古来の神道と中国大陸から伝来した仏教との融合、東アジアの宗教文化の交流と発展を現代に伝えたことを証明する、宗教的に価値のある遺産だと評価されました。
現存する日本の宗教的文化を証明するもの
紀伊山地の神社や寺院は、日本の千年以上にも渡って続いてきた宗教的文化の歴史とその発展を顕著に証明するものとして評価されました。
日本の建築文化への貢献
紀伊山地における神社や寺院の建築様式は、その後の日本の建築史において形式として貢献したとして、また、それらは紀伊山地以外の建築物へも重要な影響を与えたとして評価されました。
「紀伊山地の霊場と参詣道」へのアクセス
「紀伊山地の霊場と参詣道」は、エリアが広いため、主要な熊野本宮大社へのアクセスをご紹介します。
そして、あくまで参詣道を通してつながるエリアですので、そこを基準に各スポットへ行かれることをお勧めします。
東京から「紀伊山地の霊場と参詣道」熊野本宮大社へ行くには?
所要時間:約7時間
東京駅から新幹線でJRJR紀伊本線・新宮駅まで約1時間40分。
JR紀伊本線・新宮駅から、バスで「本宮大社前」停留所まで約90分。
大阪から「紀伊山地の霊場と参詣道」熊野本宮大社へ行くには?
所要時間:約6時間
天王寺駅から電車(特急)で紀伊田辺駅まで約2時間。
紀伊田辺駅からバスで本宮大社前駅まで約2時間。本宮大社前駅から徒歩で約5分。
「紀伊山地の霊場と参詣道」における観光地ピックアップ
本来は記事の対象となっている周辺の観光地をご紹介しますが、「紀伊山地の霊場と参詣道」は非常に広大なエリアのため、上記の見どころに加えて、訪れるべき観光地をご紹介します。
吉野水分神社
平安時代中期ごろから「子守明神」と呼ばれるようになったと言います。子守明神への祈願により、ここで本居宣長が授けられたといわれている神社です。
創建時期は不明ですが、鎌倉時代の国宝と、豊臣秀頼の創建がした社殿が重要文化財に指定されています。
大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)
吉野と熊野を結ぶ大峯山を縦走する、修験道の修行の道。約80kmにもおよぶ古道です。
熊野古道の中で最も過酷なルートとされ、修験道の開祖が8世紀初頭に開拓したとの伝承があります。ここを通る際は、それこそ修行中の僧になった気分で、是非とも入念な準備を!
大峯山寺(おおみねさんじ)
その入り口は必見! これから修行にあたって気分が律されるような、苔の生い茂った門に圧倒されること間違いありません。ここの本堂は重要文化財に指定されていて、他にも鐘や彫刻、出土したものものも同様に指定を受けました。
「紀伊山地の霊場と参詣道」周辺の宿泊施設
「紀伊山地の霊場と参詣道」周辺の宿泊施設は、その外観を生かした、露天風呂の充実した旅館が充実しています。
わたらせ温泉ホテルやまゆり
「紀伊山地の霊場と参詣道」周辺の宿泊施設の中でも、比較的、リーズナブルに宿泊できる旅館です。西日本最大級の大露天風呂を有し、また、貸切露天風呂が4つもあるという、ぜひ家族連れか大人数で行きたい旅館です。
わたらせ温泉ホテルささゆり
こちらも西日本最大露天風呂に加え、8つの貸切露天風呂があります。ペットハウス対応。オレンジ色の絨毯が敷かれた、高級感のある広々としたロビーにはずっと居座りたくなってしまうでしょう。「ホテルささゆり」同様、リーズナブルなお値段で泊まれる点も注目です。
湯の峯荘(ゆのみねそう)
熊野古道の中心にある旅館。関西トップランクの泉質を誇ると言われる、“掛け流し”の温泉宿です。室内は昔ながらの和室で、きっとノスタルジーな気分に立ち返れることでしょう。
あづまや
純和風の木造旅館。全館が木造でできているため、「紀伊山地の霊場と参詣道」の自然のその中で泊まっているような気分が楽しめます。
効能が自慢の温泉に加え、料理にも使用した当館独特の“温泉料理”が特徴です。
室内は文豪な気分に浸れる仕様となっています。
まとめ
ビジネス街の喧騒やスマートフォンをはじめとしたテクノロジーを忘れさせるような、大自然と古来からの純日本の雰囲気に浸れる世界遺産--「紀伊山地の霊場と参詣道」。
かつての修行の身にあった人々がどんな思いで、この参詣道を通ったのか……。
同じ道を辿ることでその片鱗が見えてくるかもしれません。
「タイムスリップなんてできたならぁ」なんて思う日はありませんか?
令和になった今でこそ、今の時代から抜け出して、まだあなたが生まれていない“かつての時間”に翻弄されてみてはいかがでしょうか?