北海道の世界遺産「知床」アクセス・周辺の観光地から登録理由まで

 

知床の概要

知床は、アイヌ語で「シリエトク(最果ての地)」を意味し、日本最後の手つかずの自然が残る地として2005年に世界自然遺産に登録されました。

登録領域は知床半島の中央部からその先端まで、およびその周辺の海域です。

知床半島では、火山活動が形成した雄大な知床連山、海岸断崖、そして長い年月をかけて形成された湿原、湖沼地帯等、様々な景観が1つのエリアに凝縮されております。

また知床半島では、その立地的条件から動植物の独自jの生態系が維持されており、四季折々の動植物のライフサイクル、そして風光明媚な景観が、知床を訪ねる観光客を楽しませてくれます。

知床の所在地・基本情報

  • 名称:知床
  • 英語名:Shiretoko
  • 登録日:2005年7月15日
  • 住所:北海道知床半島の中央部から先端部、および沿岸海域の71,000 ha(陸域48,700 ha、海域22,300 ha)
  • 電話番号:0152-24-3255(知床世界遺産センター)
  • 公式サイト:https://whc.unesco.org/en/list/1193/
  • 交通アクセス:観光の拠点となる知床ウトロ町までのアクセス
    • 女満別空港から車で約1時間30分
    • JR知床斜里駅からバスで約1時間

知床の構成遺産

知床半島中央部から先端部までの以下地域が知床の世界自然遺産に含まれます。

  • 河川、滝
    • 岩尾別川
    • カムイワッカ川
    • ルシャ川
    • テッパンベツ川
    • アウンモイ川
    • ルサ川
    • ケンネベツ川
    • サシルイ川
    • 羅臼川
    • フレペの滝
    • カムイワッカ湯の滝
    • カムイワッカの滝
  • 湖沼地帯
    • 知床五湖
    • 羅臼湖
    • 遠音別岳(1,330m)
    • 知西別岳(1,317m)
    • 天頂山(1,046m)
    • 羅臼岳(1,661m)
    • サシルイ岳(1,564m)
    • 知円別岳(1,544m)
    • 知床硫黄山(1,562m)
    • 知床岳(1,254m)
    • プユニ岬
    • 知床岬

知床には知床8景と呼ばれる風光明美な絶景スポットが存在します。今回、その8景の中から中でも美しい4か所をご紹介します。

知床五湖

知床観光で最も人気がある観光地の一つで、切りたった断崖絶壁の上に広がる湿地帯エリアには一湖から五湖まで五つの湖があり、湖の周囲を囲むように高架木道と地上散策路が整備されています。

かつては無名の湖沼群でしたが、1970年代以降、地元職員が歩道の整備を進めたところたちまち脚光を浴びることになりました。

原生林の中を歩く散策路とからは知床連山を眺めることもでき、多くの野生動物に出会うチャンスもあります。

知床五湖のみどころ

知床五湖見学の醍醐味は一湖から五湖の周りに整備された高架木道か地上遊歩道の散策です。散策路からは美しい湖と湖面に反射する知床連山の姿、知床らしい木々が茂る森の景観を楽しむことができます。

高架木道散策路は、冬の間以外は通年無料で開放されております。往復約1.6kmでバリアフリー対応となっており、歩くのに自信が無い方も安心して楽しむことができます。

地上遊歩道は、散策前にレンジャーのレクチャーを受けた上で歩き始めます。ヒグマの活動が活発になる5/10-7/31の間はレンジャーと一緒に歩く必要があります。(事前予約制)また、地上遊歩道は小ループ1.6kmと大ループ3kmの2つのコースから選ぶことができます。

フレペの滝

フレペの滝は、知床連山を源とする地下水が高さ約100mの断崖からオホーツク海に流れ落ちる美しい滝です。フレペの滝には流入河川がないため、水量が少なく水が涙のように斜面を流れ落ちる様子から「乙女の涙」といいう愛称で浸しまれています。フレペはアイヌ語で「赤い水」を意味し、滝の水に夕日が映り込むため、水に鉄分が含まれているため等、諸説ありますが、現在流れている水が赤いということはありません。

フレペの滝のみどころ

フレペの滝へは、知床世界遺産センターの裏手にある散策路を海岸沿いの断崖を目指す片道約1km(往復2km)の散策路を歩いていきます。

まずは森を抜けて、入り江の強風により木々の成長が遮られている草原に出ていきます。そしてさらに進んでいくと岬にある展望台に到着し、そこからフレペの滝を見学することができます。

正面には滝、海、断崖絶壁、背後には雄大な知床連山と広い草原の景色を楽しんでください。

頻繁にヒグマが目撃されるスポットでもあるため、一人ではなく仲間や家族と会話をしながら歩く、視界が狭いところでは手を叩く、熊鈴を持参し音を出しながら歩く等、ヒグマへの配慮が必要です。

カムイワッカ湯の滝

カムイワッカ湯の滝は、知床半島のほぼ中央にある活火山で知床連山の一部である硫黄山を源流とするカムイワッカ川に掛っています。

カムイワッカはアイヌ語で「神の水」の意味で、硫黄線分が強く生物が住めない魔の水としてアイヌからは恐れられていました。

カムイワッカ湯の滝は、知床を代表する秘湯、天然の大温泉として知られ、湯の滝には多くの観光客が訪れています。現在は落石の恐れがあるため車道から100mほど滝を登ったところにある「一の滝」までへの散策が可能となっています。

カムイワッカ湯の滝のみどころ

知床らしい手つかずの大自然、自然の神秘、知床ならではの秘境感を演出してくれるのがカムイワッカ湯の滝です。

湯の滝では裸足になり滝を登っていくことが可能です。約10分登っていくと、一の滝にたどり着きます。晴れた夏の日には水着で滝壺の温泉に浸かることもできます。

水温は約30℃でぬるめですが、何よりも知床の山奥の秘湯に浸かるという達成感があります。一の滝への道は足場が悪い上、急こう配を上がっていく必要があるため十分に注意して下さい。

尚、カムイワッカ湯の滝へは、約10kmの未舗装道路を走っていく必要があります。狭くガードレールもなく野生動物がいきなり飛び出してくることもあるので、運転に不慣れな方は十分注意が必要です。

知床峠

ウトロ温泉と対岸の羅臼町を結ぶ知床横断道路の頂上、知床連山の主峰羅臼岳(1661m)を臨む標高738mの峠です。

峠までの知床横断道路はウトロ側、羅臼町側からを合わせ全長27kmで、曲がりくねったカーブが続く大自然を車窓から満喫できる絶好のルートです。

7月下旬でも見ることができる残雪は知床の過酷な気候を感じさせ、天気が良ければ頂上付近から羅臼岳の絶景、北方領土の国後島も見える人気のドライブコースとなっています。秋の羅臼岳とその周辺の紅葉も見事で、峠がオープンする4月下旬から11月上旬まではたくさんの観光客がドライブを楽しみます。

また、地元民にとってもウトロと羅臼を最短距離で繋ぐ重要なルートとして利用されています。

知床峠のみどころ

ウトロ側、もしくは羅臼川からドライブしていくと、頂上付近の駐車場に到着します。駐車場の敷地内には展望スペースとトイレがあります。

展望スペースからは雄大な羅臼岳、美しい海、そして遠方にうっすらと見える北方領土の国後島の景観を楽しむことができます。

しかしながら、知床峠はとにかく天候が不安定です。いつも濃い霧に包まれている印象でせっかく行ったのに何も見えないということも多いところです。もし晴れていて山も海も島もはっきりと見えたら、かなりラッキーです。

峠の駐車場は羅臼湖に向かう登山者の駐車場としても利用されています。4つの沼を巡りながら羅臼湖を目指すコースで散策時間が約3時間半前後となる登山中級者向けコースです。

ウトロには地元ネイチャーガイドとこのような知床トレッキングコースを楽しむプランもたくさん用意されているため、アウトドア派の方には是非お勧めです。

知床が世界遺産に登録された理由

世界遺産に登録されるには10ある世界遺産登録基準の中で最低1つをクリアしなければいけません。
2005年に知床が世界遺産に登録された理由について見ていきましょう。

知床が該当する登録基準

2005年南アフリカ共和国のダーバンにて行われた「第29回ユネスコ世界遺産委員会で知床の「世界自然遺産」登録が決定しました。

その際に知床が世界遺産に含まれるべきとされた登録基準は以下2つです。

(ix)
陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。

(x)
学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。

登録基準に合致している点はどこ?

それでは知床は上記(ix)、(x)に照らし合わせ、どのような特徴があるため世界自然遺産として認められたのでしょうか。

知床独自の生態系と食物連鎖

知床には固有の生態系と食物連鎖が存在します。知床では、冬になると流氷がやってきます。

この流氷の氷の裏側には植物性プランクトンが成長し、これを追ってオキアミ、そして魚がやってきます。このサイクルが魚を餌とするオオワシ等の海鳥、そしてアザラシ等の海獣の命をつないでいるのです。

また、秋には回遊していたサケが知床の河川に戻ってきます。ヒグマがサケを食べそしてヒグマの食べ残しが、他の生き物の餌になります。

そして動物の死骸、糞尿は土に返り森を豊かにします。これら海と山の命の循環が知床の価値を高めていると言われています。

知床の絶滅危惧種の存在

知床半島には世界的に絶滅を危惧されている動植物が多くいることも世界自然遺産登録時の評価ポイントとなったようです。

世界的な絶命危機で日本では(北海道のみ)約170羽しか生息していないシマフクロウや、冬季になると知床に越冬するオオワシも個体の減少率は少ないものの、依然として絶滅が危惧されています。植物ではトコスミレとういう希少な植物も知床には分布しています。

またオジロワシやケイマフリのオオワシ同様希少な海鳥が知床で繁殖し、鯨、シャチ、トド、そしてヒグマやエゾシカといった大型の哺乳類が知床半島では高密度で生息しています。

先にご紹介した独自の生態系と食物連鎖のため、沢山の動物に餌資源を提供することができるのも知床半島で、それ故に希少種でも生き延びることができるのでしょう。

環境管理の側面

知床は日本では国立公園として国の保護管理下に置かれています。そして知床固有の自然と生態系を守るという観点から「知床世界自然遺産地域科学委員会」や「知床エコツーリズム推進協議会」等の各委員会や会議等が複数設置されています。

上記委員会や会議によって各専門家により、知床の自然は自然科学、社会科学の視点からも管理されていると言われます。これら管理体制がユネスコから評価され世界自然遺産登録に結びつきました。

知床へのアクセス

2005年の世界自然遺産登録に伴い、知床の知名度は急激に世界中に広まりました。今では多くの観光客が訪れる日本有数の観光地となっています。

知床では斜里町ウトロ温泉、もしくは羅臼町のどちらを観光の拠点にするかで、2パターンアクセス方法がありますが、今回は比較的一般的な、ウトロ温泉を拠点とするアクセス方法をご紹介します。

東京から知床ウトロ温泉へ行くには?

所要時間:約3時間

羽田空港から最寄りの女満別空港まで飛行機で約1時間40分、女満別空港からレンタカーで約1時間30分

※札幌駅からJRを利用し網走駅、もしくは釧路駅で乗り換えしJR知床斜里駅まで移動、そしてそこからバスでウトロに行くという方法もありますが、札幌から知床斜里までは電車で6時間30分くらいかかりますので、お勧めできません。

大阪から知床ウトロ温泉へ行くには?

所要時間:3時間30分~4時間

関西国際空港/伊丹空港から最寄りの女満別空港まで飛行機で約時間2時間~2時間30分、女満別空港からレンタカーで約1時間30分
※東京からの場合と同じく札幌駅からのJR移動はお勧めできません。

知床周辺の観光地

世界遺産知床(ウトロ温泉エリア)を観光の拠点とした場合の周辺の観光地についてご紹介させていただきます。

いずれの観光地もウトロ温泉まで向かう途中に位置しているため、知床観光の前もしくは後に訪ねることができ、アクセスも便利です。

小清水原生花園

網走市から知床ウトロ温泉に向かう途中の国道244号線沿い、オホーツク海と濤沸湖(とうふつこ)に挟まれた約8kmの細長い砂丘公園が小清水原生花園と言われています。

名前の通り、6月から8月にかけて約40種類の花々が公園内に咲き誇ります。エゾスカシユリ、エゾキスゲ、ハマナスといった北海道ならではの花からセンダイハギ、ヒオウギアヤメ等、黄色、ピンク、紫と色とりどりの野生の花々の見学はいかがでしょうか。

敷地内のインフォメーションセンターの中では映画上映や野生の花々の資料展示があり北海道の植物について学ぶことができます。

網走天都山とオホーツク流氷博物館

知床ウトロ温泉から約1時間30分の距離(約78km)に位置する網走市内の有名見学地です。網走市は網走国定公園内に含まれ、街の周辺には網走湖、能取湖(ノトロ湖)、佐呂間湖(サロマ湖)、そして濤沸湖等の湖が点在し湖沼地帯として知られております。

網走市で一番高い山(207m)の頂上にはオホーツク流氷博物館があり、1年を通して生の流氷を見学することができ、流氷が運ぶ生態系について学ぶことができます。

博物館の屋上は展望台となっており、網走市と周辺の湖、そして天気がよければ知床半島を一望することが可能です。

知床ウトロ温泉周辺の宿泊施設

知床観光に便利な拠点となるのが知床ウトロ温泉です。ウトロ温泉ではオホーツク海に沈む夕日を露天風呂から眺めることができる温泉宿が多く、源泉かけ流しのところも多いため、知床散策の疲れを癒すには最高の宿泊地となります。

ハイクラスからスタンダード、そして民宿、ドミトリーといったお手軽価格で宿泊できるお勧め宿をご紹介します。

知床第一ホテル

知床第一ホテルは西館、東館、至然館とあり、客室の選択は、それぞれ、家族、カップル、シニア、大人数、ちょっと贅沢にというお客様の状況と予算に合わせた選択が可能です。

料理もバイキング、お食事処での和食懐石、そして部屋食と選ぶことができ、部屋と同じくお客様の都合、状況、そして予算に合わせて選択することができます。

北こぶし ホテル&リゾート(KITAKOBUSHI SHIRETOKO Hotel & Resort)

オホーツク海に面した立地は素晴らしく、大浴場の温泉からはオホーツク海の夕日を眺めることができます。

客室は和を基調にした、豪華な内装で部屋によってはオホーツク海に面した客室露天風呂が備え付けられています。

食事は、テラスダイニング波音(HAON)でのブュッフェ形式、品数約50種類の和洋中の料理を、ウトロ港を臨むテラス席で楽しむことができます。

グリル知床では、知床近郊の新鮮な食材を創作料理としてグリルスタイルで提供されます。宿泊プランによって夕食を選べるのはうれしいオプションです。

ホテル季風クラブ知床

なんと全室オーシャンビューという最高の立地です。もちろん温泉もあり、予約をすれば木造りの貸し切り露天風呂も利用することができます。

拘りの夕食は地元の海鮮食材を豊富に使った和食や新鮮な旬の食材を使ったオイルフォンデュを楽しむことができます。

館内は基本和と洋の融合を基調としていますが、部屋のタイプによってはリーゾナブルに宿泊することも可能です。

しれとこ村つくだ荘 & shiretoko HOSTEL Hanare

地元密着の民宿として知られている、しれとこ村つくだ荘ですが、近年リニューアルされた新館、そして向かいの建物は改装されホステルとして営業されています。

ウトロ温泉の高台に位置しており、つくだ荘には源泉かけ流しの温泉、そして家族風呂もあります。ホステルの設置に伴い外国人やビジネスでの利用も増え、無料Wi-Fiも完備されています。
ウトロに低価格で宿泊したいなれば、ここをお勧めします。

温泉民宿 酋長の家

温泉民宿酋長の家は、ウトロ港のすぐ近くにあり、近くには知床観光の一つのハイライト、知床観光クルーズの観光船乗り場、コンビニ、そしてバス停もあり便利な立地です。

館内に入ると、アイヌ民族の装飾が目立ち、北海道旅行をしているという旅心を刺激してくれます。リーゾナブルな料金で宿泊できるに関らず、食事は驚きの内容です。

新鮮な地場産の海鮮物や中にはアイヌ伝統の料理も含まれます。温泉はこじんまりとしていますが、源泉かけ流しの贅沢な仕様です。ゆったりと癒されて下さい。

まとめ

知床は日本最果ての地として、元々野生動物達が暮らし、入植した人々も自然との共存を大切にしてきた場所です。そのような歴史がある知床だからこそ、現在でも我々は知床独自の生態系と動植物、そして雄大な大自然の景観を見る事ができるのでしょう。

2005年の世界自然遺産登録以前には、地元農家による農園拡大、大手リゾート会社の森林伐採等自然破壊が知床で発生し、一時的に知床の生態系も維持が危ぶまれた時代もありました。

現在は、世界自然遺産登録により、人々の意識が変わり、ナショナルトラストと呼ばれる植林活動も盛んに行われています。知床の大自然を保護し、また過去あったものへの復元が進んでいます。

皆さんも日本最後の未開の地で北海道らしい雄大な景色、そして野生動物とのふれあいを楽しまれてはいかがでしょうか。

是非、知床を訪ねていただき自然を敬い保護をしていただきながらの観光をお楽しみ下さい。

参考記事

今回の知床のご紹介をするにあたり以下のような記事を参考にさせていただきました。

知床世界遺産センター

ecotopia

北海道ラボ

小清水町ホームページ

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