白神山地の概要
白神山地は青森南西部県と秋田北西部県にまたがる広大な山地帯の総称で、その規模は13万ヘクタールに及び東京ドーム2万8000個分にもなります。
白神山地では、人の開拓が入っていない東アジア最大級のブナの原生林が分布しており、その領域内では多種多様な動植物が生息、自生し独自の生態系を維持しています。
その世界的な希少性と価値から1993年、法隆寺地域の仏教建造物、姫路城、屋久島とともに日本で初めて世界自然遺産に登録されています。
世界遺産登録領域は白神山地全体の13万ヘクタールの内、約1万7000ヘクタールです。
白神山地の所在地・基本情報
・名称:白神山地
・英語名:Shirakami-Sanchi
・登録日:1993年12月11日
・住所:青森県の南西部から秋田県北西部(全130,000ha 内17,000haが世界遺産領域)
・電話番号:0172-85-2810(白神山地ビジターセンター)
・交通アクセス1:観光の拠点となる青森県弘前市白神山地ビジターセンターまでのアクセス
羽田空港~青森空港へ移動。連絡バスで弘前へ。弘前から五能線で約2時間~3時間
東京駅~新幹線で新青森駅に移動。連絡バスで弘前へ。弘前から五能線で約2時間~3時間
・交通アクセス2:二ッ森トレッキングの拠点となる秋田県側からのアクセス
羽田空港~秋田大舘能代空港から車で約2時間
・公式サイトURL
https://whc.unesco.org/en/list/663/
白神山地の構成資産
白神山地の世界遺産領域内、以下地域が世界自然遺産に含まれています。
森林
・ブナの原生林
滝、河川
・暗門川
・暗門滝
・赤石川
山
・白神岳(1,235m)
・向白神岳(1,250m)
・二ツ森(1,086m)
・真瀬岳(988m)
白神山地のみどころ
白神山地には風光明媚な絶景スポットが数多く存在します。今回その中から4箇所のご紹介です。
暗門滝
暗門滝は岩木川上流の白神山地内、暗門川にかかる滝で、上流側の第一の滝、そこから200メートル下流に位置する第二の滝、そしてさらに160m下流にある第三の滝で構成されています。
暗門の滝は、白神山地観光で最も人気のある観光地の一つで、古来より地元では名勝地として知られていました。
暗門滝へのアクセスは白神ラインという景勝道路沿いにあるアクアグリーンビレッジANMONという観光観光施設が拠点となり、ここから散策をスタートすることになります。
暗門滝のみどころ
アクアグリーンビレッジANMONから出発する道が整備されたトレッキングコースで、暗門川の渓畔を伝い自然の景観美を楽しみながら歩けます。第三の滝、第二の滝、そして第一の滝への歩いていくコースで、往復約2.5kmで片道約1時間で楽しめます。
散策路ではブナや松の老樹が生い茂る森の中を歩くのでリラックス効果抜群です。森の景観が女性らしい雰囲気に対して、滝周辺は険しい岸壁に囲まれた男性的でダイナミックな景観を楽しむことができます。
暗門の滝への散策コースは毎年、だいたい6月中旬から下旬までが利用可能となっています。白神山地では、生態系維持のため、動植物の捕獲、採取、ゴミの投げ捨て禁止等のルールがあります。
散策に出発する前にビジターセンターに立ち寄りしっかりと確認しておきましょう。
二ッ森
二ッ森は青森県と秋田県の県境にまたがる山で、白神山地を代表する山の一つです。泊岳という名称で呼ばれることもあります。
世界遺産白神山地の山の中で最も簡単に山深くまで入ることができる山として二ッ森への登山道は白神山地観光の中でも人気コースの一つとなっております。
二ッ森登山口へは青森県側から五能線で近くまで行くことができますが、結局登山口までは車でアクセスするしかないため、二ッ森登山やその周辺の白神山地の見どころを楽しむには秋田県側からアクセスするのが便利です。
二ツ森のみどころ
二ツ森登山散策路は、登山口から山頂までは約1時間のコースです。このコースは比較的短い距離で片道約1時間で登れるということもあり初心者向けのコースと言えます。しかしながら、中腹からは勾配がきつくなるので油断することなく臨みましょう。
標高1086mの二ッ森の山頂からは世界遺産白神山地を360度のパノラマで楽しむことができます。6月頃は世界最大級のブナ林で構成される樹海を一望でき、天気が良ければ日本海、牡鹿半島、岩木山や八甲田山も望むことができます。
そして二ッ森山頂へ到達することの意義として、通常足を踏み入ることができない世界遺産白神山地の核心地域(コアゾーン)に歩いて行くことができるというのがあります。
山頂への距離も短く高い山ではないため、山を制したという感覚にはなりにくいですが、その代わりに秘境に到達した達成感を味わうことができます。
また二ッ森散策路周辺は白神山地の中でも最も早く紅葉が訪れる場所として知られ10月初旬には美しい紅葉の景色を楽しむことができます。
ブナ林散策道
ブナ林散策道はブナ林を周遊する一周約1時間のコースで所々に階段がある程度の簡単なウォーキングを楽しめる初心者コースです。小さい子供を連れて家族でも楽しむことができ、途中で疲れた時のためのショートカットコースも用意されています。
コースの入口は先に紹介した暗門の滝コースと同じアクアグリーンビレッジANMONです。暗門の滝コースに自信がない方はブナ林散策道を歩くのがお勧めです。
このコースでは気軽に白神山地の緩衝地域(バッファゾーン)に入ることができ、白神山地ならではの独自の生態系に触れることができます。
白神山地の世界自然遺産登録地域は核心地域(コアゾーン)と緩衝地域(バッファゾーン)に区別されており、核心地域は入山制限領域、緩衝地域は外部からの人為的影響を及ばさないよう注意しなければいけない領域のことを指します。
ブナ林散策道のみどころ
ブナ林散策道では、世界最大規模のブナ原生林の一区画を直に歩いて楽しむことができます。散策路は、落ち葉でできた腐葉土が重なっているため足の負担も軽減でき老若男女問わず楽しむことができます。
白神山地では多くのトレッキング、ハイキングコースがありいろいろな角度から手つかずの自然にアプローチしますが、各コース比較的体力が必要とされるため散策を断念する方もいます。
しかしながらこのブナ林散策道では誰もが安心して散策を楽しむことができます。ブナの森はもちろん、ミズナラ、サラグルミ、アオモリマンテマ、ツガルミセバヤ等の貴重な植物を観察し、運が良ければニホンカモシカ、クマゲラ等の動植物に出くわすチャンスもあります。
白神山地が世界遺産に登録された理由
世界遺産に登録されるには10ある世界遺産登録基準の中で最低1つをクリアしなければいけません。
1993年に白神山地が世界遺産に登録された理由について見ていきましょう。
白神山地が該当する登録基準
白神山地はかつて北日本を覆っていたブナ林最後の地であり、開発を免れた原生林が広がっています。その広大な領域は日本国内の他の地域では見ることができず、領域内では独自の生態系が保たれています。その希少性、生態系の保存の観点から世界遺産の評価基準をクリアし1993年に世界自然遺産に登録されました。
その際に白神山地が世界遺産に含まれるべきとされた登録基準は以下1つです。
(ix) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
登録基準に合致している点はどこ?
それでは白神山地は上記(ix)に照らし合わせ、どのような特徴があるため世界自然遺産としてみとめられたのでしょうか。
白神山地創造の歴史と独自の生態系
白神山地は約200万年前、当時陸地がなかったところに日本海が隆起して姿を現したと言われています。
白神山地の地層は日本海ができたころの堆積岩と海底火山活動で噴出した溶岩から成り白神山地に群生するブナ林は今から約8000年前頃と言われています。今から8000年前の日本列島は氷河期が終わり温暖になっていた頃です。
白神山地には原始的な自然環境が多く残っており誕生から長い年月がたった今も独自の生態系を維持しています。ブナの森には、ブナをはじめとしてミズナラ、サワグルミ等の樹木があり、アオモリマンテマやツガルミセバヤ等の希少植物が育成し、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、イヌワシ、クマゲラ等の野生動物が生息しています。
青秋林道建設の中断
1982年8月に白神山地を分断する青秋林道の建設工事が始まり、白神山地のブナ林は伐採の危機に陥りました。しかしながら、その後秋田県、青森県の自然保護団体をはじめ全国の自然保護団体の運動によって林道の建設は中止されました。
この青秋林道建設の中断以前にも白神山地では当時の日本の開発優先主義の流れに対しての抗議、つまりは自然と環境の保護、保存をすべきという考えがあり、開発が企画される度に地元団体と政府が戦ってきたという歴史がありました。
こうした自然保護団体の運動は、その後の日本の開発優先主義の流れを変え、1992年に日本の世界遺産条約批准につながり、さらには翌年1993年に白神山地が世界自然遺産に登録されることにつながりました。
ブナの森から学ぶ森林の生態系保護の必要性
白神山地は地球が氷河期の時代に北から南へ広がり多様性を保ち続けてきたブナの森が大部分の割合を占めています。これだけの規模の広大なブナの森を含む保護地域は世界でも珍しいと言われています。
森林は全体が巨大なダムとして機能し、森から流れ出た水は土地を潤し、海に流れて豊かな漁場を生み出します。森林は大気中の二酸化炭素を吸収し我々に酸素を供給してくれます。
いままで8000年もの間生き抜いてきたブナの森が森の大切さ、必要性を人間に教えてきました。そして白神山地の森林の生態系は、これまでの地球規模の気候変動と白神山地を襲った豪雪の歴史を反映していると言われ、独自の生態系がこれまで維持されている顕著な例となっています。
そのため、白神山地はユーラシアのブナ林の生態系に関する陸地の寒冷な生態系の生態学に関する研究や、気候や植生の変化の長期的なモニタリングにとって非常に重要なものとなっているのです。
白神山地へのアクセス
白神山地は1993年に世界自然遺産登録され、そして1997年公開のスタジオジブリ映画の名作「もののけ姫」の舞台にもなったとして日本を代表する観光地となっております。
白神山地へは青森側からアクセスする方法と秋田川からアクセスする方法の2パターンがあります。今回は比較的多くの観光地が周囲に点在する青森側からのアクセス方法についてご紹介します。
東京から白神山地へ行くには?
所要時間:4時間20分~5時間20分
羽田空港から日本航空で青森空港まで約1時間20分、そこから空港連絡バスに乗り約1時間かけて弘前駅に向かいます。
そして弘前駅から五能線に乗り、白神山地観光スポットまで移動します。その間の所要時間は2時間~3時間です。
大阪から白神山地へ行くには?
所要時間:5時間~6時間
伊丹空港から日本航空もしくは全日空で青森空港まで約2時間、そこから空港連絡バスに乗り約1時間かけて弘前駅に向かいます。
そして弘前駅から五能線に乗り、白神山地観光スポットまで移動します。その間の所要時間は2時間~3時間です。
白神山地周辺の観光地
白神山地へ青森側からアクセスした場合の周辺観光地についてご紹介させていただきます。
十二湖
十二湖は白神山地の西端に位置しており、世界遺産領域からは外れていますが、白神山地観光では大人気スポットとなっています。
十二湖散策の最寄駅となるのが五能線「十二湖駅」で、そこから車で15分の距離に入り口になる「森の物産館キョロロ」です。
十二湖は江戸時代に起きた大地震により山崩れが起こり形成されたと言われており、崩落した山の上から見た景色が12の湖に見えたことから12湖と呼ばれています。
十二湖は大小33の湖沼群からなり十二湖散策トレッキングコースは、白神山地観光の中でも人気が高いコースとなっており、美しい湖沼群の景色を見学しながらのんびり歩けるのが魅力です。
散策路は一周約1.5kmの1時間30分コースで散策路沿いには美しい湖沼群が広がります。特に有名なのが神秘的な青池で、時間帯によって色が変わって見えることで知られています。
日本キャニオン
日本キャニオンは白神山地の山肌が白くむき出しになっている状態の景勝地でダイナミックなU字谷大断崖で、その名前はアメリカのグランドキャニオンにヒントを得て命名されています。
深いブナの森林に覆われた白神山地の中で山肌がむき出しになっているところは珍しく人気の観光地となっています。
日本キャニオンの絶景は、最寄の駐車場から山道を約20分登ったところにある展望所から楽しむことができます。
ここの駐車場の道路を挟んで向かい側には十二湖散策路もあるため体力に自信のある方は2つの散策路を組み合わせて楽しむこともできます。
尚、歩くのが大変という方は、車でのアクセスが可能です。麓の国道101号線を車で走ると車窓から景色を見ることができます。
白神山地周辺の宿泊施設
白神山地の観光に便利な拠点となるのが青森側からのアクセスとなります。弘前市に宿泊するという選択肢ももちろんありますが、今回は白神山地の内部、もしくは白神山地観光の拠点とできる近郊の温泉宿をご紹介します。
ハイクラスからスタンダード、そして民宿、ドミトリーといったお手頃価格で宿泊できるお勧め宿をご紹介します。
星野リゾート 界 津軽
白神山地での宿泊をおしゃれでハイクラスな旅にしたい方にお勧めなのが星野リゾート 界 津軽です。星野リゾートには白神山地のビジターセンターから車で約35分の場所に位置しており、観光に便利です。
ホテルが位置する場所は古くから親しまれている大鰐温泉郷で、昔ながらの和を基調としながらも洋のテイストを取り入れたファッショナブルな客室は2019年にリニューアルオープンしました。
地元の贅をつくした創作和食の食事、毎晩行われる津軽三味線のコンサート、そして青森ヒバの湯殿で楽しむ高品質の大鰐温泉と全てにおいてハイクラスのサービスを提供しています。
アクアグリーンビレッジANMON
白神山地の大自然を大満喫したいという方に是非お勧めのホテル施設がアクアグリーンビレッジANMONです。
アクアグリーンビレッジANMONはコテージタイプの宿泊施設で白神山地の代表的観光スポットである暗門の滝の近くに位置しており白神山地散策の拠点として、またトレッキングを楽しみたいという方お勧めです。
アクアグリーンビレッジの敷地内には宿泊施設のコテージ、レストラン、キャンプ場が充実しており家族でキャンプを楽しむのもお勧めです。
近くの川で川遊びを楽しむこともできます。
また温泉施設もあり白神山地の大自然を感じながら露天風呂を満喫することもできます。
アソベの森 いわき荘
白神山地から車で約30分の位置にあるアソベの森 いわき荘は、気兼ねなくのんびり温泉に浸かりたいという方にお勧めです。
宿は岩木山が見晴らせる最高のロケーションに位置していて、弘前駅への無料送迎バスも利用が可能です。
館内は昔ながらの温泉宿のぬくもりを残しつつ、和と洋が調和したモダンな内装が特徴です。青森の海と山の幸をふんだんに使った自慢の料理も定評があります。
いわき荘は沢温泉に属しており、青森ヒバの湯殿と源泉かけ流しの温泉は旅の疲れを癒してくれます。お手頃価格の値段で満足度の高いサービスを受けることができます。
アオーネ白神十二湖
観光地である十二湖から近く全17棟のコテージがある宿泊施設です。コテージによっては和室を備えたタイプもあり、好みによって選ぶことができます。
敷地内にはレストラン、キャンプ場、温泉等があり自然を満喫するには絶好のロケーションです。レストランで提供される地元で採れた厳選された食材も評判です。
アオーネ白神十二湖では宿泊することによって季節に合わせた様々な体験をすることが可能です。夏は満天の星空とキャンプ、秋は錦秋の紅葉、そして冬はスノーシュー等をお楽しみ下さい。
また、敷地内には物産展、遊具広場もあり家族連れのゲストもそれぞれの趣向に合わせて滞在を楽しむことができます。
黄金崎不老不死温泉
黄金崎不老不死温泉は白神山地の麓の町、青森県深浦町にある温泉旅館です。旅館は黄金崎に建ち日本海に沈む美しい夕日を全室オーシャンビューの客室から臨むことができます。
波打ち際の露天風呂が自慢の温泉からは白神山地だけでなく、十二湖等の綺麗な自然も温見ることができます。
食事にも定評があり、網元の宿だからこそ提供できる新鮮な旬の海の幸をベースとした地元食材を楽しむことができます。また白神山地の伏流水を使った地酒も用意されており、地元の魚介類との相性が抜群です。
旅館は「ここでしか味わえない感動をお客様に提供する」ことを常に追及し営業しています。
まとめ
白神山地には広大な規模の大自然が広がっています。アクセス方法も青森側、そして秋田側からと2パターンあり、白神山地内には見どころが豊富にあり、一度の旅で全てを見学し尽くすにはかなりの時間が必要となることがわかります。また世界遺産登録区域内、特に核心部分については入山許可が必要であったり、登山経験者でも難しいコースがあったりします。
今回ご紹介したところは、トレッキング初心者の方や歩くことに自信が無い方でも自分のペースで大自然を楽しめるスポットをメインにしています。
これを機会に、世界最大規模のブナの原生林を訪れ、8000年以上にも及ぶ悠久のブナ原生林の歴史を肌で感じ、さらには野生動物との出会いを求めてみてはいかがでしょうか。
参考記事
今回の白神山地を紹介するにあたり以下のような記事を参考にさせていただきました。